アリペイはジャック・マー氏率いるアリババグループが運営してることは有名で、ご存知のことだろうと思います。そのアリババグループは、アリペイの先に何をみているのでしょうか?
ジャック・マー氏の数々の言葉、そして行動をみていると、その本意が見えてくるような気がします。今日はジャック・マー氏とアリババの行動から、どんな世界を見据えているのか確認していきましょう。
もっともっとフラットな社会
たとえば、クレジットカードが信用を縦に、権威のある信用情報ネットワークに信用を与えられるものから、横の信用に、つまりP2Pで相互に評価し合う仕組みを作ったように、今後はさらに、横のつながりを重視するものだと考えられます。
これは非常にインターネットと相性がよく、フラット化であり、同時に民主化でもあります。権威制度から解放されて、徐々に民主的な、人々の手に信用を取り戻していくことが、本当にインターネット的なサービスではないでしょうか。
相互宝のP2P保険が登場
これがどういうことか、具体例で解説します。
日本が令和に入った2019年5月、アリババグループは「相互宝」というP2P保険のシステムを発表しました。
アリペイの電子決済利用者に対して、保険のサービスを付与するものです。これはある種の助け合い保険で、日本でも昔からあった仕組みです。中国では保険の事情がおそらくまた違うと思われますが、この相互宝の仕組みは非常に簡単です。
ソーシャルネットワークでの言動、アリペイでの決済記録。それらをベースにした芝麻信用スコアが650を超えた人だけが加入できる仕組みです。
芝麻信用スコアのインセンティブになるわけです。より安全で社会的に善とされる行動を取り、裏切らない人だけが、P2P保険でより安全な保障を受けられるということです。
中国人の行動を変える芝麻信用
この仕組みは、「マナーがよくない」と言われ続けてきた中国の方々の行動を変えようとしています。なぜなら、これまで中国の方は個人主義だというイメージがありました。それがあるからこそ、中国人観光客にあまりよくないイメージを持っている方もおられました。
それが、お金をきちんと払うこと、公共性、インターネット上のマナー、などが厳しくスコアリングされることで、大きくマナーが向上し、国民全体が変わろうとしているのです。
中国は巨大な国ですから、一人ひとりの行動を変えるには、仕組みで変えるしかありません。従来はどのような独裁者にもできなかったこの行動が、インターネットのP2Pという民主化システムによって、改善されようとしているのです。
ジャック・マー氏は中国のあり方と中国人そのものを変えようとしています。アリペイはその大切な一歩なのです。