消費者還元事業とは、キャッシュレス決済を導入したら、消費者にポイントが2-5%還元され、お得になる事業です。なんとこれを推進しているのは経済産業省。つまり国です。

なぜ国がこのような施策を打つのか。
還元される5%は、私達の税金から支払われることになりますから、公益性がなければなりませんよね。

そこで、消費者還元事業について紐解き、そして本当にこの事業は必要で、何を目指しており、どこに向かっているのか、さらに本当に公益性があって正しい施策なのか、確認していきましょう。

国がやってる事業ですが、忖度なしでいきます。

消費者還元事業は消費増税の対策

消費者還元事業とは、いってしまえば消費税増税で景気が落ち込まないための、ある種のバラマキ事業の側面があります。バラマキは短期的には指示を集めるので、政府にとっては有益な施策だと思うのでよく実行されます。誰しも現金やそれに準ずるポイントをもらえるのはうれしいですからね。

一般に、消費税に限らず、増税は景気を冷え込ませます。しかし国にも増税せざるを得ない事情があるのでしょう。なぜなら、私達の国日本は世界一の少子高齢化をひた走っており、どんどん子供の数が減っていってるからです。社会保障も年金も、もともと子供が増え続けるピラミッド型の人口を前提として作られており、人口バランスが大きく崩れた今、もう国の財政は現状維持できないのです。

つまり、どのみち未来に向けて増税は必須であり、避けられないのが現状。しかし、増税があると消費マインドは大いに落ち込みます。とくに消費税は国内で消費されるあらゆる物やサービスにかけられますから、8%→10%にあがるだけで、すべてのモノが2%値上がりするのです。

つまりは増税での落ち込みを防ぐ消費喚起

そこで、消費者還元事業という対策を打って、キャッシュレスのついでにポイント還元を実施して消費を盛り上げよう!というのが、消費者還元事業の裏事情といったところです。

また、ポイント還元はインパクトがありますし、なんとなく心理学的にも2%まけてもらうより、2%ポイントバックがあった方がお得になる気がするのは証明されています。よって、ポイント還元でお得を宣伝して、消費マインドを落ち込ませないようにしようというのが狙いでもあります。

ポイント還元とキャッシュレス業界は、2018年12月に突如スタートしたPayPayの20%バックで大いに盛り上がりました。何もかもが20%オフになるのですから、一気に100億円もの消費が生まれたのです。特に、家電量販店でiPadなどが飛ぶように売れていきました。

ただ、PayPayは20%というインパクト抜群の数字でした。今回の消費者漢検事業はポイント5%バックです。これは果たして奏功するのか、いま注目が集まっています。

ただし、この消費者還元事業は後述の通り、いくつかの問題点をはらんでいます。

軽減税率と同じで余計に経済が停滞しない?

一方で、消費増税に当たって大きな問題となっているのが、軽減税率です。軽減税率とは、一部の公益性が高いサービスだけは増税を据え置くというもの。会計処理が極めて複雑になるため、会社も、経理部門も、税を扱う会計事務所も、処理する国も、システムを開発するIT部門も、みなに負担がかかります。

この軽減税率は、「近年稀にみる悪法」として、インターネットではほぼすべての媒体で批判されています。軽減税率に賛成と言っているのはその対象となる大手新聞社ぐらいではないでしょうか。なにせ、負担が増えるだけで生産性が上がるわけではありませんから、あまりいいシステムではないのです。

国がシステムや会計処理を複雑にすれば関連企業がうるおいますが、それでも人手不足の昨今、軽減税率に人手を取られてはたまらないというのが民間の本音ではないでしょうか。

消費者還元事業は、ここまでの悪法ではないものの、デジタルデバイドを引き起こす可能性があります。デジタルデバイドとは、インターネットを上手に使いこなしている人とそうでない人の格差のことで、キャッシュレスアプリを上手に使いこなせれば得をし、そうでなければ得をしない。そういう格差が生まれるのを、税金で推進していてはいけないのではないかと考えられます。

しかし、スマホが98%の人に行き渡った今、できればそれを活用して、キャッシュレス経済を、さらには国民貯蓄を吐き出して循環させてほしいとうのが国側の思惑ではないでしょうか。※ちなみに、消費者還元事業はSuicaなどの電子マネーも対象です。

国はクレジットカードを持てない人にも平等にすべき

デジタルデバイドを引き起こさないよう、平等な観点からみてみると、クレジットカードを持てない人にも恩恵が同じように与えられるよう工夫すべきではないでしょうか。ただ、前述の通り、電子マネーなども対象になるので、大抵の場合は消費者還元事業の対象となる中小規模の事業者での小売商売で購入することとなります。

客層や扱っている商材を問わず、キャッシュレス決済を進めるべきです。たとえば、筆者の自宅の近所には地元に密着した自転車屋さんがありますが、QRコード決済が導入されています。そこで聞いてみたところ、「導入してみると、田舎というのもあってそれほどPayPayで払う人はいない。でも、宣伝になるから、良いと思う」との答えでした。ひとつ500円の自転車のベル、1000円のキーロックを売っている小さな自転車屋さんですら、キャッシュレスが導入されているのです。

考えてみれば、自転車本体を買うとき、2万円ぐらいしますから、5%還元になったら1,000円引きです。キーロックを無料でもらえるのと同じだと考えると、キャッシュレス決済してみようかなと思う人も増えるかもしれません。

本当に平等な還元事業になる!?

消費税は、逆進性があるとされ、たとえばコンビニやスーパーなどの日用品、生活必需品を買うウェイトが大きい低所得家庭ほどダメージが大きいという側面があります。そこで5%還元があれば、2%の消費税増税を補えるという形です。

対象となる事業者は

例)
資本金5,000万円以下で従業員50名以下の小売業
資本金3億円以下で従業員300名以下のソフトウェア・情報処理サービス業
資本金5,000万円以下で従業員100名以下のサービス業

などが対象になります。
つまり今回お話を聞いた自転車屋さんは、該当するということです。
さっそく、2019年10月になったら、自転車を新調しようかと考えています。

まとめ

今回は消費者還元事業について別の側面からみてきました。
国がキャッシュレスを推進するのですから、税金を使うわけで、それならしっかりとした説明が必要ですよね。しかし、ほぼまったく周知されていません。それでも、しっかり情報を集めて消費者還元事業の波に乗り遅れないようにしましょう。

2019年10月~2020年6月までなので、これをきっかけにキャッシュレスに日本人全員が慣れて、どんどん経済が循環し、お店も儲かって消費喚起になる、そんな思惑を国は持っていますが、果たしてうまくいくか、関心が持たれます。