中国ではQRコード決済が非常に浸透しています。
そして、現地の情報を伝えるメディアも増え、昨今は中国での事情がとてもよく分かるようになりました。
そしてよく話題になるのが「中国では路上の屋台ですら、QRコード決済が主流であり、非常に進んでいる。日本は遅れている」という論調です。
たしかにその通りであり、日本のキャッシュレス決済事情は遅れていることは事実なのですが、それでも「路上の屋台ですらQRコード決済」というのは少し事情が異なります。
出典:http://news.livedoor.com/article/detail/13138277/
しかし、実際に写真で、働く屋台の中国人男女と、QRコードのパネルを見たことがあるのではないでしょうか。QRコードを使って何らかのお金のやりとりが行われていることは事実です。
ここでいうQRコードの決済は、支付宝(アリペイ)およびウィーチャットペイです。
QRコード決済とQRコード送金
では、屋台のQRコードはいったい何なんでしょうか?
それは、QRコード送金だと考えられます。
QRコード送金はQRコード決済とどう違うのかというと、債権の有無となります。
QRコード送金:債権なしの個人間送金
QRコード決済:債権であり支払い方法が選べる
という違いがあり、QRコード送金は日本でいうところのLINE Payやメルカリのメルペイと似たような仕組みとなります。LINE Payやメルペイは、口座間で直接お金を送金しているものであり、これだと債権が間に入らないので、手数料もかなり安くなります。
QRコード決済のメリット
じゃあQRコード“送金“でいいじゃないか、と思われるかもしれません。
たしかにQRコード送金は手数料が安く、送金も間に企業が入らないので早いのです(といっても処理速度はほとんど変わりません)
そのかわり、QRコード送金はクレジットカードのように分割やボーナス払いやリボ払いが使えません。また、違法なものや不健全なものを販売したときに、間に入っている債権の会社がそれを拒否することもできません。つまり社会におけるお金の循環が、可視化されなくなるのです。GDPにも入らない可能性があります。なにせ、単なる個人間送金ですから。
LINE Payで割り勘するときを考えてみましょう。
居酒屋が3人で6,000円だったとして、ひとり2,000円でLINE Payにて送金してもらったとき、そのもらった6,000円はGDPには入らないですよね。カウントしたら計算がおかしくなります。最初の居酒屋での売上6,000円が、経済としてカウントされるべきものです。
このように、中国の屋台はたんに個人間で送金して、代わりにクイック送金が行われているのです。
QRコード送金のデメリット
こう考えると、日本でも小規模な店舗ならQRコード送金の導入で良いと思われるかもしれません。しかし、日本では法人での導入はQRコード決済を行うべきでしょう。QRコード送金を導入した場合、支払いの拒否(リジェクト)ができませんし、常に一括払いで口座の残高が支払い上限となります。
しかし、中国人観光客の爆買いを目当てとするのであれば、たとえば、先方の口座に日本円で1万円しか入っていなくとも、1万円以上の買い物をしてもらうことができます。なぜなら、クレジット決済が選べるからです。
このように、顧客に選択肢を与えることは非常に重要で、ほんの少しの手数料の違いなら、QRコード送金ではなくQRコード決済を導入した方が、売上の最大化につながると考えられます。
さらなる一歩を実現するために
そして重要な点がひとつ残されています。
それは、中国ではベンチャー企業が急激な勢いで増え、同時に新しいイノベーティブな有限公司(会社)がどんどん登場していることはご存知だろうと思います。
そして、中には既存の法律での制限があって、グレーと言いますか、ボーダーラインギリギリのビジネスが成立しづらいという環境があります。それはどこの国でも条件は同じで、送金つまりお金に関することは特に政府が介入します。つまり資金移動業である必要が生じるのです。
現に日本では2018年に、お寿司をメタファーとして現金のやり取りができる「Osushi」という投げ銭サービスが停止になりました。資金移動業ではないのに、お金を投げていたからです。本人確認がないまま、クレジットカード決済を実現していたので、勝手に資金移動ができてしまっていたのです。
資金決済法に触れてしまっていたと考えられます。なお、Osushiは現在、リニューアルして法的なポイントをクリアしています。
ただ、LINE Payは資金移動業をクリアしており、正式に送金が可能です。当初のOsushiはそれをクリアしていなかったのです。
これは見方を変えれば、日本は法律がかなり厳しく、新しいサービスが誕生しづらい側面があります。資金移動業の要件を満たさず個人間送金が可能であれば、マネーロンダリングなどが容易になり、地下経済の温床になってしまいかねません。よって、法律でガチガチにしばっているのです。日本ではとくにその傾向が強く、それが治安を維持するのに一役買っています。
まとめ
中国の屋台において、QRコード送金が行われていることは意外と知られていません。
どのニュースをみても、QRコード決済と書いてあります。
これは正確ではありません。屋台においてはQRコード送金なのです。
中国と日本ではかなり事情が異なります。
QRコードでお金をピッとやりとりしているだけに見えても、その背景には国の事情、店の事情などさまざまなものが横たわっています。