一時期増えすぎたキャッシュレス決済アプリ。
アリペイ、ウィーチャットペイ、PayPay、LINEペイなどが有名ですが、ゆうちょペイ、pring、au-Payなどが乱立して、もはやスマートフォンの中はペイだらけ、せっかくのキャッシュレス決済が、スマホ画面を圧迫している…そんなことはないでしょうか。

この「ペイ増えすぎ問題」。2020年に入って、OrigamiPayが実質経営破綻し、1株1円でメルペイのメルカリに身売りしました。このペイ増えすぎ問題について、ベンチャー企業が直面する課題を考察していきます。

Origamiは会社ごと売却という結末になりましたので、ネットにはネガティブな風評があふれています。メルペイとの提携を「弱者連合」と揶揄する向きも。しかし、ビジネスにおいてはネガティブなだけの発言は意味をなしませんから、できる限り前向きな解釈が必要です。

撤退撤収でもめないこと

まず、Origami撤収の良かった点として、派手な経営破綻をして借金を残すのではなく撤収できるときに撤収したということです。ただし、売却額は非公表ながら日経新聞等の報道では1株1円で259万円といわれています。資本金が42.5億円でしたから、価値がほとんどなくなってしまいました。

Origamiは、キャッシュレス決済の先駆けでした。サービス開始したのはなんと2012年。ペイ周りが取り上げられたのが2019年頃ですから、実に7年先読みしていたのです。入れ替わりが激しいスマホ関係の決済の中で、これは非常に先見の明があるものと考えられます。

1株1円で身売りするのは、42.5億円もの資本金を持つ会社にとって大きな屈辱だったことでしょう。そして社員も9割が解雇されています。メルカリにとっては人材すら魅力的ではないと判断されたのです。そうした屈辱的な目にあいながらも、表立ってトラブルを起こさなかったことは懸命です。

家賃を抑える

Origamiから学ばなければなりません。同社は年間2.2億円の売上を持ちながら、年間家賃3億円の六本木ヒルズに事務所を構えていました。2018年に移転していますから、キャッシュレス決済が盛り上がると同時に、一気に勝負をかけた形です。結果として、勝負に敗れることとなってしまいましたが、六本木ヒルズに事務所を構えると、固定費がとてつもなく膨大になってしまいます。

六本木ヒルズに入居している企業といえば、Google日本法人などです。とてつもない大企業でないと、年間3億円もの家賃を払い続けることができないのではないでしょうか。固定費は下げるのが基本です。個人の節約でも、法人が力尽きないためにも、キャッシュフローは固定費を少し下げて、体力を温存するのがセオリーとなります。

体力勝負を見極める

体力といえば、もはやキャッシュレス決済は、20%還元が当たり前で、お金のバラマキすなわち体力勝負になりつつあります。先導するPayPayが、20%還元を行って、競合がそれに続いたため消費者が還元に慣れてしまったものと思われます。

一方で、アリペイとウィーチャットペイは、利便性だけで勝負しています。もちろんアリペイにもインセンティブは存在しますが、20%還元ほど大きなインセンティブをしているわけではなく、システムの利便性と使い勝手の良さが浸透の大きな理由です。

日本のキャッシュレスは体力勝負になっており、ZOZOを買えたりする孫正義社長の体力(つまり資金力)の勝負に持ち込まれてしまっています。孫正義社長も、自分が勝てるフィールドに勝負を持ち込んでいるということです。

つまり、勝てるフィールドで戦うことが大事です。自分のフィールドに上手に引き込んで、戦っていきます。キャッシュレス決済は、最初から体力勝負だったわけではなく、PayPayがそのフィールドに引き込んだのです。

QRペイやキャッシュレスの未来は信用決済基盤?

そして、QRコード決済や、キャッシュレス決済の未来を考察していきます。
PayPayと、それを率いる孫正義社長は、アリババのジャック・マー会長の描いた戦略図を参照しているといわれています。つまり、アリババのアリペイは単なるQRコード送金/決済の便利なツールというだけではなく、その先に個人の支払い信用を使ったローンなどを期待しているということです。

お金にまつわるあらゆる信用を集める。それが狙いかと考えられます。
支払い、ローン、信用・・・そうしたワードをすべて拾っていくのが、現在のPay周りの先にあるものではないでしょうか。アリペイのようにです。現に、フリマアプリメルカリは、ヘビーユーザー対象に「後払い」システムを導入しています。

信用が貯まると、つまりメルカリ内での実績が貯まると、何十万もの買い物を後払いで可能になるのです。そして、その信用や実績というものは、実社会の信用とは切り離されたものです。仮にクレジットカードがブラックリストで使えない人であっても、メルカリ内での信用がたまっていれば、後払いは可能なのです。

逆に、クレジットカードが別のブラックカードつまりセンチュリオンカードを持っていようとも、メルカリ内の信用が貯まらなければ、後払いは使えないことが考えられます。このように、新しく生まれつつある信用決済基盤は、既存の信用インフラとは別のものであることが大きな特徴です。ブラックリスト入でも、使える。それが大きな魅力です。新しい信用を積み上げていけばいいのですから。誰にでもそれは開かれています。

すでに勝負はついた・・・!?

さて、国内では、OrigamiPayが撤退し、PayPayとLINEPayが統合される(予定)であることで、すでに勝負は決したという感があります。しかし、それでも独占禁止法がありますし、競争をして健全に発展してもらうためにも、後発には頑張っていただきたいところです。

とくに、アリペイはほぼ中国人だけのものと言いますか、中国国内の銀行口座を持っている人にしか使えないアプリで、いまのところは世界の人にオープンとされていませんので、日本国内は日本のアプリが占められます。

Origamiは非常に残念でした。QRコード決済という便利なサービスを実施し、とくに大きなバグも起こさず、お金周りを慎重に進めてきたのですが、体力勝負に巻き込まれて会社譲渡となってしまったのです。

最後に

ペイ増えすぎ問題は、最終的に2つか3つの大手と、その他の中小アプリに分かれていくものと思われます。今はまだ、ペイを使って日常でみなさんが使っている段階です。もしかしたらクレジットカードやSuicaやPasmoのほうがいい!と思われるかもしれません。しかし、お金の新しい可能性として、QRコード決済はこれからも伸び続けます。だんだんとセキュリティ的にも“枯れて”来て、より強固なセキュリティを持ち、たくさんの小売店や飲食店で使われることとなるでしょう。

そもそもクレジットカードを導入するよりも手数料が安く、Suicaのようにデポジットを取られたりなくしたときにすべてロスになったりしない、新しいお金の形であるQRコード決済。今後も増えていくことが予想されますので、いまからQRコード決済のインフラとして、決済アプリを店舗にいれておくのが理想です。

そして、キャッシュレスの未来は、いくつかのアプリがパラレル(並行)に生き残り、独占はありえませんので、複数の決済アプリ(アリペイやウィーチャットペイを含む)をひとつで統合できる決済アプリを使うのが理想的です。